
工事現場周辺での誘導が主な業務となる2号警備の場合、自身の業務を滞りなく行えるようにするためには、建設業界の用語を覚えておくことも必要となってきます。
今回は、工事現場に欠かせないあの建機をテーマに解説していきます。
ユンボとバックホーとショベルカーの違いって何?
建設現場や道路規制の現場に配属された際、建設作業員やベテランの警備員が、よくこの言葉を発すると思います。「ユンボ」「バックホー」。
工事関連の職場の経験がなく警備員の仕事に就いた方にとって、はじめは何が何だかわからないのではないでしょうか?業界未経験の方であれば、バックホーと言ったのか、それともバック4と言ったのかすら、判らずに迷っておかしくはないでしょう。
これらは聞きなれない単語ですが、見た目はどう見ても、子供の頃に図鑑で見たショベルカーそのものです。
「え?ショベルカーなんじゃないの?」
そんな疑問を持つのは、何ら不思議なことではありません。
実はユンボもバックホーもショベルカー!
疑問を持つのは当然です。なぜなら、ユンボも、バックホーも、ショベルカーだからです。
どういうことだ?と思うでしょう。つまりはこういう事です。
ショベルカー、ユンボ、バックホー。これらは呼び方が違うだけで、物は同じという事なのです。
余談ですが、そのように、同じものに複数の呼び方がありますから、流石に業界団体も動いていて、業界団体(日本建設機械工業会)は「油圧ショベル」という統一呼称を掲げています。
バックホーは行政呼称
一括りに「工事」といっても、よく中身を見てみると、それぞれ中身は違います。解りやすいところで言えば、道路の工事と建物の工事では、細かな内容が違ってくるようなものです。その工事が、行政絡みかそうではないか、というのも違いのひとつでしょう。
実は、バックホーという呼び方を紐解く際にはそれが重要で、「バックホー」という呼び名は、実は行政用語なのです。もっと言うと、正しくは「バックホウ」です。書類上だとBHと略称で書かれていることも少なくありません。呼びやすさや書きやすさから、現在のバックホーの表記(呼び名)が主流になったと思われます。
バックホーは日本と海外では異なるものを指す
「バックホー(バックホウ)」は、英語の「後ろ(バック)」と「ホウ(農作業に使われる鍬)」が足し合わされて出来た言葉です。
語源からも想像がつくように、バックホーは、元々は農耕用の機器なのです。海外ではその名残がまだあって、海外で「バックホー」というと、前方にローダーバケット、後方にバックホー(日本的には「ショベル」でしょうか)をそれぞれ備えている建築機材を指します。
じゃあ、日本的なバックホーはどう呼ぶのか?というと、海外の場合、日本のようなバックホーは「エクスカベーター(excavator)」と呼ばれます。
このように、日本と海外では、バックホーというと異なるものを指すのです。海外で工事の仕事や警備の仕事に携わることは(特に警備に携わることは)まず無いでしょうが、話のネタに知っておくのも良いかと思います。
ただしバックホーはショベルが内側(バック)を向いているものを指す
さきほどバックホー=ショベルカーと申しました。当然嘘ではないのですが、厳密に言うと違う場合もあるので、少し解説します。正確には「ニアイコール」なのです。
バックホー(日本版)は、ショベル(バケット)がオペレーターの方を向いている(後方を向いている)建機のことを指します。
ショベルが前向きに付いている機器は、バックホーではない、ということになります。
ユンボは元々フランス企業の製品名でいまは商標
では、ユンボは一体どうなのでしょう?ユンボの場合、バックホーとは異なります。
実は、ユンボというのは製品名なのです。ユンボは、フランスのシカム社(現・ユンボ社)が製造および販売をしている建機(油圧ショベル)なのです。
1961年に出荷された国産初の油圧ショベル「Y35」は、フランスのシカム社が開発したもの(生産はキャタピラージャパン明石事業所の前身である新三菱重工業明石工場)ですから、日本の工事現場においてはショベルカー=ユンボという名前で浸透していったというわけです。ちなみに「Y35」は、国立科学博物館重要科学技術史資料(未来技術遺産)に選定されています。
また、これがややこしいのですが、「ユンボ」という言葉、由来は上記の通りですが、日本における商標は、レンタルのニッケン社が登録をしています。警備の現場においては関係ない話ですが、雑学として覚えておくのも良いでしょう。
いかがでしたでしょうか?上記のことを頭に入れて、工事現場での警備業務に就く際、ユンボ、バックホーという単語に困惑しないようにしましょう。
なお、これからはじめての警備業務に就く、という方は、あわせてこちらの記事も参考にしてください。
まとめ
1.ユンボ、バックホー、ショベルカーは、呼び方が違うだけで、どれも同じものを指している。業界の統一用語は「油圧ショベル」となる。
2.バックホーは日本と海外では指しているものが異なる。日本でいうバックホーは、海外だとエクスカベーターと呼ぶ。
3.ユンボは仏シカム社(現ユンボ社)の製品名。日本で最初に出荷された油圧ショベルがシカム社開発の「Y35」であったため、日本ではユンボの名前が定着した。