燃料電池自動車(FCV)とは?特徴・仕組み・普及しない理由など

夢のエネルギー』として2010年代に実用化された燃料電池自動車(FCV)ですが、どういったものなのかあまり知られていないのも現実です。 

究極のエコカー』なんて呼ばれている燃料電池自動車(FCV)は、国産車ではトヨタの「MIRAI(ミライ)」とホンダの「クラリティ FUEL CELL」が市販されており、次第に普及が始まっています。 

ハイブリッドカー(HV)や電気自動車(EV)などが人気がある現在では、燃料電池自動車(FCV)の事も知っておきたいところです。 

そこで今回は、燃料電池自動車(FCV)の特徴・仕組み・普及しない理由などを解説していきます。 

燃料電池自動車(FCV)とは? 

燃料電池自動車(FCV)のFCVとは「FUEL CELL VEHICLE」の略になり、その名の通り燃料電池を利用した自動車になります。 

一般的に電池と聞いて想像されるのは、「乾電池」や近年電気自動車やハイブリッドカー、そしてスマホやパソコンに至るまで生活の中で幅広く使われている「充電池」、また、古くから自動車のバッテリーとして現在も使われている「鉛蓄電池」だと思います。 

しかし、燃料電池の仕組みはこれらの電池とはまったく異なるものになります。 

燃料電池自動車(FCV)の仕組み 

燃料電池自動車(FCV)は、水素と酸素で発電してモーターを動かす仕組みなのですが、中学校の理科の実験で水の電気分解を行ったのを覚えているでしょうか? 

電解質を溶かした水に電流を流すと、酸素と水素に分解する事ができますが、燃料電池はこの働きの逆の仕組みになります。 

水素と酸素を化学反応させて水にする段階で電気のエネルギーを発生させるので、乾電池などと違い電気を貯めておくのではなく、化学反応による発電装置という事になります。 

燃料電池には水素の他、メタノールやエタノールなども燃料に使う事が可能なものもありますが、現在市販されている燃料電池自動車(FCV)のほとんどが水素を燃料にしています。 

このように、燃料電池自動車(FCV)は車両に搭載する燃料電池で発電し、モーターを動力にして走行する電気自動車の事を指します。 

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燃料電池自動車(FCV)のメリット(特徴) 

燃料電池自動車(FCV)のメリットは『エネルギー効率が高い』『有害物質を出さないクリーンなエネルギー源』『充電が不要、航続距離が長い』この3つが挙げられます。 

メリット(特徴)①エネルギー効率が高い 

燃料電池自動車(FCV)は、水素と酸素を化学反応させて直接電力を作ることができます。 

そのため、エンジンで発動したり外部からの電源供給で充電しなくてはならないハイブリッドカー(HV)や、プラグインハイブリッドカー(PHEV)に比べ、エネルギー効率がとても高いという特徴があります。 

メリット(特徴)②有害物質を出さないクリーンなエネルギー源 

燃料電池は水素と酸素を結び付けて電気エネルギーを取り出すもので、反応後は水(水蒸気)のみが排出されます。 

従来の内燃機関(エンジン)が発生させていた大気汚染の原因物質とされる一酸化炭素(CO)や窒素酸化物(NOx)や炭化水素(HC)、浮遊粒子状物質(PM)といった有害物質がまったく発生しないクリーンなエネルギー源として注目されています。 

また、地球温暖化の原因とされている二酸化炭素(CO2)も発生しないので、よりクリーンなエネルギー源と言えます。 

メリット(特徴)③充電が不要、航続距離が長い 

古くから自動車に使われている鉛蓄電池や、電気自動車(EV)やハイブリッドカー(HV)に使われるリチウムイオン電池などは「二次電池(蓄電池)」と呼ばれる充電池で、電池のパッケージの中に収められた電解質の酸化還元作用が終わると、電気が取り出せない(電池がなくなる)状態になります。 

電池がなくなったら、外部から充電したりエンジンを回転させて充電したりする事で、再び酸化還元作用が行えるようにバッテリーの能力を回復する必要があります。 

この制約により、電気自動車(EV)やハイブリッドカー(HV)の一充電あたりの走行可能距離(航続距離)が限られ、重量増に繋がっています。 

しかし、燃料電池自動車(FCV)は短時間での燃料充填が可能であることと、一充電による走行距離(航続距離)が長いのが特徴になります。 

電気自動車(EV)の航続距離が最長でも約320㎞程度にあるのに対し、燃料電池自動車(FCV)は約600㎞以上の航続距離を実現しています。 

ほぼ従来のガソリン乗用車の航続距離に匹敵するもので、電気自動車(EV)がかかえる実用面での課題を克服したものと言えます。 

燃料電池自動車(FCV)が普及しない理由(デメリット) 

燃料電池自動車(FCV)が普及しない理由として、『まだ水素ステーションの数が少ない』『車両価格が高い』『普及させるための課題が多い』この3つが考えられます。 

まだ水素ステーションの数が少ない 

燃料電池自動車(FCV)の燃料を補給するための水素ステーション(水素供給設備)は、「首都圏」「中京圏」「関西圏」「北部九州圏」の4大都市圏と、4大都市圏を結ぶ幹線沿いを中心に整備が進められていて、2020年10月現在135ヶ所で運用されています。 

この数は、ガソリンスタンドの約3万ヶ所、充電スポットの約2万ヶ所に比べると非常に少なく、燃料電池自動車(FCV)の利便性を大きく妨げる原因となっています。 

燃料電池自動車(FCV)は航続距離が長く、約600㎞走行する事が可能とされていますが、水素ステーション間の距離が場所によっては非常に遠く、満タンにしておいても水素ステーション~水素ステーションへ直接向かう事ができないという現象が起きることもあります。 

車両価格が高い 

燃料電池自動車(FCV)は、水素を化学反応させる際に発生する電力で走行するという若い技術を使用している事もあり、車両本体の価格が非常に高額になっています。 

2020年10月時点で市販されている燃料電池自動車(FCV)は2車種のみですが、そのどちらも非常に高額な価格設定になっています。 

トヨタのMIRAIは約741万円という価格が設定されていて、この価格はトヨタの高級セダンであるクラウンの最高級モデル「3.5G-Executive」の732万円を超える価格です。 

また、ホンダのクラリティ FUEL CELLは約790万円と、さらに高額になります。(クラリティはリース販売向けのため一般販売はありません) 

これもホンダの高級セダンのレジェンドの721万円を大きく上回る価格になります。 

普及させるための課題が多い 

クリーンなエネルギー源である水素の活用が注目されている燃料電池自動車(FCV)ですが、普及を広めるためには補助や規制緩和にさまざまな課題が残ります。 

課題①購入費を低減する補助金はあるが限度がある 

燃料電池自動車(FCV)はクリーンなエネルギー源を使うだけでなく、レベルの高い先進安全技術の導入や、高級感のある内装を採用するなど価格にふさわしいだけの価値のある品質を持っています。 

しかし、国や地方から補助金を受けても400万円を超える購入費用は、一般家庭では気軽に出せるものではなく、購入に歯止めがかかっているのも事実です。 

課題②水素ステーション建造の規制緩和があるもなかなか建設が進まない 

水素ステーションは建造にかかわる規制が非常に複雑であり、「高圧ガス保安法」「県軸基準法」「都市計画法」「消防法」と複数の法律が絡み合っています。 

経済産業省ではこれらの規制に対し2019年6月から規制緩和(これまで消防法で認められていなかったガソリンスタンドと水素スタンドの併用の許容、高圧ガス保安法で規制されている公道等との距離から8mから5mまで短縮するなどの10項目)を開始しましたが、建造費用にも大きな問題を抱えています。 

水素ステーションの建造費用はおよそ4~5億円かかると言われており、ガソリンスタンドの建造に必要な2億円前後と比べると数倍の費用が必要とされています。 

まとめ 

燃料電池自動車(FCV)について解説しましたがいかかがでしたでしょうか? 

エネルギー効率や環境性能に優れ、次世代の自動車として電気自動車(EV)と共に有望視されていますが、水素ステーションの数の問題や車両価格の高額さなどまだまだ課題も多いです。 

今後の技術の進歩や、利用にかかる社会的な環境の改善状況なども見守りつつ、自分のライフスタイルにあったものを選択する事が大切ですね。 

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