
日本人にとって国民食といっていいほど私達の生活と縁の深いマグロですが、スーパーなどで並んでいるマグロのラベルを見ると、『クロマグロ』『ミナミマグロ』『メバチマグロ』『キハダマグロ』など、いろいろな名前が書かれていますが違いはご存知ですか?
また、『生マグロ』の表示を見て「刺身なんだから生は当たり前でしょ」と思っている人も多いようで、この「生」は「火が通っている、通っていない」の生とは違う「冷凍されていない」ということはあまり知られていないようです。
そこで今回は、マグロの種類の違いや冷凍マグロの解凍方法などを紹介していきます。
マグロの違い
日本人だけでなく、世界中の「寿司」「刺身」好きから愛されるマグロですが、数多くある種類や味の違いを正しく理解している人はそう多くないかもしれません。
高級マグロと言われるクロマグロから、庶民的な回転寿司や加工食品に使われるマグロまで、幅広いマグロの種類や特徴を紹介しながら、マグロの魅力をお伝えしていきます。
1 マグロの王様:クロマグロ(本マグロ)
日本でマグロと言えば、何と言ってもクロマグロ(本マグロ)です。
お寿司屋さんで出される高級マグロの代表で、「大間のクロマグロ(本マグロ)」などブランドになっているものも多く、毎年恒例の初セリで「○○億円で落札」などで話題になっています。
通常はそこまで高額ではありませんが、クロマグロ(本マグロ)はとにかく大きく、全長3m・体重400kg以上になるものもいるので、1尾100万円以上するものもあり単純計算で刺身一切れ2,000円以上する事もあります。
クロマグロ(本マグロ)は、見た目は黒光りした魚体が「黒いダイヤ」のように美しく、最大100k/h以上の高速スピードで泳ぐため、胸ヒレが短いのが特徴です。
肉質はマグロの中で最も深みがあり、赤身はねっとりとした旨味があり濃い赤色をしており、脂質が多くそのクオリティの高さに多くの日本人が惹きつけられるマグロの王様です。
クロマグロ(本マグロ)は北半球をグルグルと回遊しており、旬は冬になりますが春~夏は産卵で瘦せて味が落ちます。
産地
日本近海で獲れるものは、主に生で流通し高級品として取引され、大西洋(アメリカ・カナダの東海岸から輸入)・地中海(スペイン・モロッコ・イタリアなどから輸入)のクロマグロ(本マグロ)は主に冷凍されて取引されています。
最近では、スーパーなどで「養殖(畜養)のクロマグロ(本マグロ)」をよく目にしますが、天然マグロとは区別され価格も少し安くなっています。
2 二番手の高級マグロ:ミナミマグロ(インドマグロ)
外見はクロマグロ(本マグロ)と似てますが、少し小さく全長2.2m・体重160kg程度で、尾の近くにある小さなヒレが黄色いのが特徴です。
肉質は鉄分が豊富で発色が鮮やかなため、赤身とトロの境目がわかりやすく、甘みが強くねっとりと脂質が良いのでお寿司屋さんで好まれて使われ、クロマグロ(本マグロ)と人気を分ける高級マグロで、インドマグロと呼ばれることもあります。
流通量が少ないのと、発色が鮮やかな分色変わりが早いという難点があるため、スーパーなどではあまり見かけません。
産地
ミナミマグロ(インドマグロ)は、オーストラリア・ニュージーランド・南アフリカなど南半球の低水温の海域で獲れます。
近年は、乱獲による漁獲量の激減で流通量が減っていて、国際機関「みなみまぐろ保存委員会(CCSBT)」は、2010年より漁獲割当量を各国に厳守させるための証明制度を導入しました。
なお、ミナミマグロ(インドマグロ)は養殖(畜養)事業も盛んで、オーストラリアのポートリンカーンは水揚げ量世界一として有名です。
3 刺身の消費量NO.1:メバチマグロ(バチマグロ)
日本では関東を中心に流通量が多く、スーパーや回転寿司・宅配寿司などで見かける「マグロ」の刺身の多くは、このメバチマグロ(バチマグロ)です。
肉質はクロマグロ(本マグロ)・ミナミマグロ(インドマグロ)に比べると脂質が少ないため、寿司のネタ・刺身としては3番手になりますが、さっぱりとした味わいで赤身だけでなく中トロも美味しくいただけることから、「漬け」「カルパッチョ」「カマ焼き」「煮物」「ねぎま汁」など色々な食べ方を楽しめます。
外見はその名の通り、パッチリと目が大きく頭部がずんぐりしているのが特徴で、深い海を泳ぐことから目が大きくなったと言われています。
メバチマグロ(バチマグロ)は、全長2m・体重150kg前後とミナミマグロ(インドマグロ)と同じぐらいの中型種で、漁獲地によって旬の時期もさまざまです。
他のマグロに比べると資源量も豊富ですが、2014年9月に国際機関「中西部太平洋まぐろ類委員会(WCPEF)」は、中西部太平洋のメバチマグロ(バチマグロ)が乱獲状態であると判断したため、今後規制が強化されることが予想されます。
産地
日本近海ものは、秋の三陸沖のメバチマグロ(バチマグロ)が刺身として高く評価されていますが、外国産も多くチリ・ペルー・北米からの冷凍ものや、インドネシア・オーストラリアから空輸される生が有名です。
4 関西で人気:キハダマグロ
日本では大阪を中心に関西で好まれるマグロですが、ハワイでは『アヒ』と呼ばれていてとても人気があります。
肉質はピンクに近い薄い赤色であっさりとクセのない味わいで、脂質は少ないのでトロは取れませんが、身が締まっているため刺身やステーキによく合います。
日本近海で獲れるキハダマグロは刺身としても評価が高のですが、ツナ缶詰の原料としても多く漁獲されています。
キハダマグロは、全長2m・体重170kgで、ミナミマグロ(インドマグロ)・メバチマグロ(バチマグロ)と同じ中型種で、黄色みがかかっているのが特徴です。
産地
メバチマグロ(バチマグロ)のように赤道をはさんで太平洋・大西洋・インド洋の南北の温暖海域に広く分布しており、メバチマグロ(バチマグロ)よりも高水温・浅い地域に生息しています。
資源量が多く世界および日本のマグロ漁獲量1位はこのキハダマグロになり、沿岸海域ではスポーツフィッシングの対象としても愛されています。
5 回転寿司などで人気:ビンチョウマグロ(ビンナガマグロ)
ビンチョウマグロ(ビンナガマグロ)は、加工品として消費が多くツナ缶詰の材料として食されてきた大衆的なマグロです。
最近では、回転寿司で「ビントロ」と称して生食されるようになり、脂の多い時期の食感がトロに近いことから美味しいと大人気です。
肉質は火を通すとマグロというより鶏肉に近い食感で、欧米でも愛され世界的需要があります。
全長140cm・体重60kg以下と小型で胸ヒレが長く、身が白に近いピンク色でマグロというより白身に近い見た目が特徴です。
産地
日本近海・世界中の亜熱帯・温帯地域で生息しており、熱帯では年間を通して産卵していますが、北半球では夏が盛期になります。
主な産地は、宮崎県・高知県・三重県・静岡県・宮城県とほとんどが国産です。
冷凍マグロの解凍方法
正月用や安いからと多めに買ってきて冷凍したマグロを解凍しようとしても、どうやって解凍するのが一番いい方法かわからない人も多いと思います。
ネットなどで調べてみると、冷凍されたマグロの解凍方法は人それぞれやり方が違うので、どの方法がいいのか困りますよね。
水道水でマグロが解けるまで解凍する人や、そのまま自然解凍する人、水で半解凍した後冷蔵庫で解凍するなど様々なやり方があるので、今回は私のオススメの解凍方法を紹介します。
マグロの氷水解凍法
冷凍マグロの氷水解凍法とは、マグロを-3℃~0℃の温度帯でかいとうする最高レベルの解凍方法です。
実は、凍ったマグロは0℃の手前の-2℃付近で溶け始めるので、必要以上に解凍時の温度を上げないようにして、マグロの細胞を傷つけないようにします。(細胞を傷つけてしまうとドリップが出てしまい、旨味も逃げ出します)
1 塩水を作る
ボールに粗塩と水道水で塩水を作ります。
塩は精製塩より粗塩の方が良いのですが、無ければ精製塩でもかまいません。海水より少し薄い程度のしょっぱさで作ります。
2 塩水でマグロを洗う
ボールの塩水でマグロの柵に付いている切り粉クズをよく洗い流します。
塩水でマグロを洗うのは、解凍されたマグロが少ししょっぱい位の方が旨味を感じやすいためです。
3 マグロを拭く
マグロの柵を塩水で洗い終わったら、キッチンペーパーなどで柵に付いている水滴をよく拭き取ります。
4 ジップロックなどの袋に入れる
ジップロックなどの密閉できる袋の中に、マグロの柵をそのまま入れます。
マグロにラップなどをする必要はありませんが、必ず密閉できる袋を使用して下さい。
また、マグロを袋に入れる際に、なるべく空気を押し出してください。
5 ボールに氷水を用意し沈める
ボールにたっぷりの氷水を用意し、その中にマグロが入った袋を沈めます。
袋が浮いてしまうようなら、重しを乗せて袋が氷水の中に沈むようにします。
時間が経つと袋に氷の膜が張るので手ではがします。
柵の大きさにもよりますが、1時間程度でマグロが解凍されます。
6 マグロの水分を拭き取る
解凍されたマグロを袋から出し、キッチンペーパーなどでマグロの水分を拭き取ります。
7 マグロを寝かせる
新しいキッチンペーパーをマグロに巻き、お皿にのせて軽くラップし冷蔵庫で半日~1日寝かせます。
ラップをするのは冷蔵庫内でマグロが乾燥するのを防ぐためで、寝かせることによりマグロの身が熟成し旨味が増します。
この方法は、マグロを解凍した後に寝かせるため少し時間がかかってしまうので、食べる時間を逆算してから余裕を持ってマグロを解凍しましょう。
マグロの温塩水解凍法
マグロの温塩水解凍法は、昔から利用されてきた解凍方法です。
「ジップロックがない」「氷を用意できない」「大量のマグロを解凍したい」このような時は、温塩水解凍法を試してみましょう。
塩水を使用するとマグロから旨味が流れ出るのを防ぎ、赤色の発色を促してくれるし、氷水解凍法より楽なので私はこちらをよく利用しています。
1 温塩水を作る
お風呂の温度位のぬるま湯(約40℃)に、粗塩を溶かして塩水を作ります。
この時、3~4%濃度(海水程度のしょっぱさ)で塩水を作ります。
2 マグロを洗い温塩水に漬ける
マグロの柵に付いている切り粉クズを水道水でざっと洗い流し、温塩水にマグロを浸けます。
3 マグロを取り出し洗う
1~2分温塩水に浸けたら、マグロを取り出し軽く水道水で洗います。
軽く洗わないと解凍後のマグロがしょっぱすぎますし、洗いすぎると水っぽい味になってしまうので、「ざっと流す」程度で洗いましょう。
4 マグロの水滴を拭き取り寝かせる
ざっと洗ったマグロの柵に付いた水滴をキッチンペーパーなどで丁寧に拭き取ります。
水滴を拭き取ったら、新しいキッチンペーパーなどでマグロの柵を巻いてお皿の上に置き、軽くラップをして冷蔵庫で半日~1日寝かせます。
冷蔵庫で寝かせるのは、氷水解凍法と同じで時間がかかります。
マグロを解凍する時は食べる時間から逆算して時間に余裕を持って解凍しましょう。
まとめ
マグロには大トロ・中トロ・赤身などの部位があり、マグロの種類にはクロマグロ(本マグロ)・ミナミマグロ(インドマグロ)・メバチマグロ(バチマグロ)・キハダマグロ・ビンチョウマグロ(ビンナガマグロ)といった種類があります。
部位と種類のマグロの組み合わせから、最高級品はクロマグロ(本マグロ)の大トロになります。
天然のマグロより値段が安い傾向のある養殖(畜養)のものでも100gで1,000円を超える事も珍しくなく、簡単には食べられなさそうな高級なマグロになります。
しかし、その他の部位やその他のマグロも美味しいので、自分の口に合ったマグロが見つけられるといいですね。
また、冷凍マグロを美味しい状態に解凍するのは時間がかかるので、食べる時間を逆算して時間に余裕を持って解凍しましょう。